豊浦の人

山海の幸、人の幸、美食家垂涎の味に酔う。

偉人が見染めた名湯に、身も心もときはなつ。

温かなもてなし、旅情あふれる湯の里の宿。

旅の想い出に彩りを添える、郷土の逸品。

目にも、体にも、心にも、感動サプライズ。

歴史と風土が織り成す、感激のひととき。

思いは深く、この地を愛する情熱人たち。

後世に語り継ぐ、豊浦ゆかりの偉人列伝。

豊浦の人 Creator of Toyoura VOL-3 情熱で拓く、新たな芸術世界。

terre et Feu(アトリエ テール エ フー) 陶芸家:Eric ATZORI アッヅォリ エリック

生まれも育ちもフランス・パリ。生粋のパリジャンは33歳で、陶芸との衝撃的な出会いを果たした。そして、母国から遥か東方の豊浦町に移り住み、陶芸家の道に入った。自分の頭の中に描いたイメージを、どれだけ忠実に形づくることができるか。それこそが彼の求めてやまないテーマだ。豊浦町で陶房&カフェ「アトリエ テール エ フー」を営む、アッヅォリ エリックさん。陶器に魅せられたこのパリジャンが感じる豊浦町の魅力とは。

◎33歳の決断、豊浦で陶芸に挑む

眩しい陽射しが雄大な響灘に降り注ぎ、波頭を銀色に照らす。その海と対峙して、どこまでもなだらかな山々の稜線が続いている。そんな美しい自然に抱かれた小高い山の懐に、エリックさんが創作に励む陶房「アトリエ テール エ フー」があります。その佇まいは、まるで田舎家といった風情の日本家屋。周囲には目立つ看板もないため、気を付けていないとつい見過ごしてしまいそうです。「豊浦町の風景は、フランス郊外の風光明美な漁師町で、メジャーな観光地として知られるオンフルールとよくに似ています。とても静かで、創作に専念するには最高の環境です」。海を眺めるアトリエの一室で、豊浦町の印象をそう語ってくれたエリックさん。
16歳から3年間、キュイジニエ(調理人)の勉強を重ねた後、一流レストランの厨房で手腕を発揮。その後、コミック雑誌のエディターとして多忙な日々を送りましたが、33歳のときにパリの陶芸教室で、ろくろによる陶器づくりと運命的な出会いを果たしました。「土に触れた瞬間、自分のこの手で何かを実現できる。そんな鮮烈な啓示を全身に受けました」。当時を振り返ってそう話してくれたエリックさん。
それ以来、彼の陶器に対する思いは募るばかり。ついには、フランスで知り合った日本人の奥様を説得し、彼女の故郷である豊浦町で陶房を開くことに。「私はバレエの講師として、パリでの永住を望んでいたんですが、結局、彼の情熱に負けて故郷に帰ってきました」。エリックさんの傍らで、ほほ笑みながら言葉を添えてくれた奥様。慣れ親しんだパリを離れて一路、豊浦へ。二人してゼロからの出発に踏み切りました。

 
 

◎イメージを目に見えるカタチにする

陶器王国・日本で、念願の陶房を開いたエリックさん。いま、萩焼の重鎮・十二代 三輪休雪氏の薫陶を受けながら、創作活動に励んでいます。「三輪先生は本当に素晴らしい人です。私のような異国からの人間を、なんのためらいもなく迎え入れてくれました。私は、豊浦町という土地に恵まれると同時に、人にも恵まれたんですね」。そんなエリックさんが創作においてモットーにしているのが芸術性。「私はつねに芸術性の高い作品を追求しています。だから、今以上に精進して、上達していきたいと考えています」と謙虚に語るエリックさん。彼の言う芸術性とは、自分の頭の中にイメージしたものを、どれだけ忠実に具現化できるかに尽きます。「それがたとえ、人に理解されないものであっても、自分がイメージしたものをカタチにしたい。それは、現実とは違う観点から、世界をイマジーネーションすることに繋がる。言い換えれば、違う見方で地球を見つめることだと思います」とも話してくれました。
エリックさんの手から生み出される作品は、飯椀や湯呑、香立て、ティーカップなどの日用雑器から、前衛的なオブジェまで様々。萩の土はもちろん、鉄分を多く含む三島土などからつくられた飯碗などは、いずれも手にしっくりと馴染むもの。シャープで繊細な高台(茶碗・皿などの底にある基台)を見れば、エリックさんの優れた技を誰もが直観するはず。
そして、エリックさんがもっとも力を入れているのが、観る者を魅了するオブジェ。日本の土とエリックさんの感性が大胆に融合したユニークな造形。細かな天然石を含んだ独特の風合い。そこには、ありきたりの約束ごとから解き放たれたエリックさんのピュアな魂が宿っているようです。

 
 

◎本場仕込みのカフェオレも楽しめる絶景のアトリエ

 

料理人としての腕をふるった経歴を持つエリックさん。その経験を活かして、「アトリエ テール エ フー」では、エリックさん自らが腕をふるう、カフェ&ギャラリーも併設しています。「彼は、ミシュランガイドの星を獲得したレストランで働いた経験もあるんです。予約をいただければ本格フレンチも味わってもらえます」と奥様。
すべての襖を取り放ってワンルームに仕立てたカフェ&ギャラリーでは、エリックさんの作品を鑑賞しながら、本場フランス仕込みのカフェオレや手づくりパイなどの軽食も楽しめます。「コーヒー1杯でもいいんです。好きな本でも読みながらゆったりと過ごしてほしい。読書に飽きたらその目を窓の外に移すだけで、山あり海ありの豊浦町ならではの素晴らしい自然も楽しめますから」と、自らのアトリエ兼カフェを紹介してくれたエリックさん。
いま、陶芸家、キュイジーヌ、そしてフランス語&スペイン語の講師と、多忙な日々を送りながらも充実した創作活動を続けています。彼の作品を鑑賞しながら、くつろぎのひと時を満喫できる「アトリエ テール エ フー」。豊浦町を訪れたらぜひとも立ち寄りたいスポットです。

 
 
◎Eric ATZORI プロフィール Profil
1964年 フランス・パリに生まれる
1999年 豊浦町に移住
2001年 下関美術展特選受賞
  西日本工芸美術展入賞
  山口県美術展入選
2007年 「現在形の陶芸萩」大賞展入選

「アトリエ テール エ フー」
カフェ営業時間 12:00~15:30(水曜・日曜定休)
住所 下関市豊浦町宇賀本郷4529
Tel・Fax 083-776-0456
●要予約で料理も可
 

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